2012 ケマル・ゲキチ夏期講習 於:クロアチア・スプリット

クロアチアのピアノ・プロジェクト協会がスプリット市の後援を受けて主催する「ケマル・ゲキチ夏期講習」は201282日〜11日にクロアチアのスプリットで開催されました。
ピアニストケマル・ゲキチを講師に迎えての第3回目です。
世界的な演奏家であるゲキチ氏が講習会でレッスンをする、ということ自体に驚いた人も多かったようです。
申込み多数で、早くに定員一杯で締め切りになりました。
730日〜82日に併催されたミニ・スクールを含め、クロアチア、タイ、台湾、マケドニア、日本から参加。 今年の第3回は、特に日本人にクロアチアを紹介したい、という意図の企画だった為、多くの日本人が参加することが出来ました。

ヨーロッパでの夏期講習は数多くありますが、このケマル・ゲキチ夏期講習ほど多くの収穫を得ることが出来る講習会は他に無いと言っても過言ではありません。
ゲキチ氏は教育への特別なアプローチを持っています。 演奏のテクニックを教えるだけではありません。 「私の目標は、より深い解釈に到達することだ。 レッスンでは楽曲の生まれた背景、作曲家が伝えたいメッセージについて話をする。」と新聞取材で語っていたゲキチ氏。
その為には、西洋音楽の生まれたヨーロッパの空気、風土、歴史遺産、思考に接することが、東洋人である私たちにとって必須の体験でした。
ゲキチ氏や現地スタッフとの交流も、ヨーロッパ文化の香りを嗅ぎ、その根本となる考え方をより良く理解する為の貴重な機会だったと云えます。

ゲキチ氏の生まれ故郷、スプリットはクロアチアのダルマチア地方、アドリア海に面した美しい世界遺産の街です。

ローマ皇帝の宮殿がそのまま旧市街になっています。

大聖堂の横に立つ
鐘楼からの眺め。

レッスンはヨシプ・ハッツェ音楽院の広い教室の舞台上で、毎朝9時から行われました。

沢山のレッスンを短期間に集中して受けるので、ゲキチ氏は各受講生の性格までしっかりと把握、一連の流れの有る効果的な指導を受けることが出来ました。

希望者には日本語通訳有り。 レッスンの模様は録画してDVDにするというオプションも。

受講生が自分の意思をハッキリ表すことや、自分に自信を持つことを求められる、大変厳しい局面もありました。
ヨーロッパ的思考でのゲキチ氏の指導に接し、受講生は、日本でのレッスンとは違う大きな刺激を受けました。 これが最大の収穫。

レッスン会場には、地元スプリットのピアノ教授や学生達も連日聴講に訪れていました。

クロアチア随一の美術家のレリーフで有名な海辺の建築物カシュテレットでは、野外コンサートに出演。日本の普通のホールでの演奏会とは全く違う、特別な体験です。
セミの鳴き声や、時間と共に暮れて行く空の色が素晴らしい雰囲気を醸し出します。
客席は満員でした。

この日のリハーサルの時間に、この夏期講習についてクロアチア国営テレビから、ゲキチ氏、ピアノ・プロジェクト協会のマネージャー、ヴァネッサ・クレーヴァさんと共に、受講生もインタビューを受けました。
受講生は「アドリア海の夜の月を見て、これからはピアノ演奏に際しtranquillo(静かに)のイメージも変わります。」等と感想を述べていました。

ピアノ・プロジェクト協会の企画は大変綿密、かつ独創性に富んだもので、マネージャー、クレーヴァさんの手腕は見事なものでした。
また、新聞取材も有り、地元スロボドゥナ・ダルマチア紙に紙面一面で報道されました。

フヴァル島へ船で渡り、海辺に立つ15世紀建立のフランシス修道院の中庭でコンサートに出演。

引き続き、講習会修了セレモニー。 
観客の拍手の中、1人ずつゲキチ氏から修了証を手渡されました。

その後、ゲキチ氏のリサイタル。
この故郷での子供時代に関するトークも交えた素晴らしい演奏に酔いしれた後は、夜遅くまで全員で賑やかに打ち上げを楽しみました。

自由時間には、もうひとつの世界遺産の街トロギール、スプリット市内観光、ビーチで海水浴など盛り沢山のアクティヴィティを楽しみ、最終日はリゾート地として有名なフヴァル島でも泳ぎました。

クリスタル・ブルーの透明な海。

紫外線を気にしていた女性陣もこの美しい海を前にして
泳がない訳にはいきませんでした。

水着を持参しなかった人も服のままエイッ!
地中海料理と似た、魚介の豊かな料理も楽しみの一つ。

ヨーロッパでのゲキチ氏に接して、大きな視野に立った指導を受け、コンサートを体験、古代遺跡の観光名所、美味しい料理、美しい海・・・と、本当に意義深く、また楽しい夏期講習でした。
素晴らしい講習を実現させてくれたピアノ・プロジェクト協会と、ゲキチ氏に感謝。
受講生は、この夏期講習で音楽的にも人間的にも大きく成長し、次回もまた参加したいという想いを胸に各自帰国しました。

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